街の印刷屋で起こった「経理の事件簿」―その1―

- 「経営者は孤独である」会社内で相談できるひとは、誰もいない。
ここでお話しするのは、ある経営者から受けた相談内容です。
今年で74歳になるその方は、創業して50年の歴史を持つ印刷業を営んでいます。
先代から引き継ぎなんとか今日まで事業を盛り立ててきた。とうよりも、なんとか維持してきたといった方がいいのかもしれない。昔のバブル時代をあざ笑うかのように、時代の流れはIT化がどんどん進み、紙媒体は減っていく一方。当然のごとく、売上は徐々に可能しているのが現状でした。
先代から引き継いだのはまだ景気の良い頃で、不動産での収益を上げていく同業者を横目に、印刷業一本で真面目にこなしてきたという。けれども、最近では印刷業だけでは従業員の給料を支払うことも上げることもままならずに、ひとづてに聞いた小銭稼ぎにパソコンの修理や販売の仲介事業を始めた。そう、3年前から息子夫婦が手伝ってくれるようになったそうです。
- 加齢と共に眼も廊下していっている。物忘れと同時に体力も落ちてきている。
70歳を超えたあたりから体力が歴然と落ち、ちょっと残業すると翌日の作業に身体は
悲鳴をあげ、経理を手伝ってくれている家内も老眼鏡をかけながらのパソコン入力はかなりこたえているようで。小口現金など、ちょっとした支払いや買い物をするお金を息子の嫁に頭を下げて、お金をもらうのはいささか抵抗があるが、経理はすでに家内から息子の嫁に業務を譲っている。若いせいかパソコン入力は得意なようで、よくやってくれている。そのおかげで昔に比べて、すぐに売上や在庫などの状況が把握できるようになった。
そろそろ、引退をしたい。仕事は息子に。家内は嫁と経理や給料計算を分業して・・・・。
でも、夫婦の経済を考えると経理のすべてを譲るのは、イヤだ。と思うのが本音なのである。せがれが、本当は別の道に進みたかったことを知っている。私の気持ちを汲んでくれたのだろう。会社を引き継いでくれる覚悟をもって、今では私の期待以上に会社に尽くしている。
いずれ社長として責任をもって、ますます会社のため従業員のために尽力して欲しいという私の勝手な願いからだが、あいつのことだから言わなくても理解してくれているだろう。
そんな順調とおもっていた日常の中、一本の電話によって、会社の将来を揺さぶるような事件がおこったのである。
顧問契約をしている会計事務所からであった。
「パソコンの在庫を確認したいのですが、例年と比べて原価率に差があり過ぎますので。」
電話の内容は、とにかく一度会って確認をしたいとのことだ。
「原価率??」
決算を迎えるにあたって必要書類を提出し、4半期ごとにチェックをしてもらっている。別におかしなことをはないはずなのだが、なんのことを言っているのか正直よくわからない。
年度末の繁忙期に向けて忙しいのだが、せがれと一緒に事務所を訪れることにした。
会計事務所の担当者は、若いのにパソコン内でグラフなどを使いこなし、わたしにもよくわかるように説明をしてくれ、いつもながら感心しながらの対面となった。
要は「パソコンの売上原価率が例年と違いすぎるのはおかしい」という指摘で、棚卸しの在庫をもう一度よく調べて欲しいといったことだった。
そんなたいそうなことではないだろうと思う中、「わかりました」と返事をして、事務所を後にした。
さっそく、会社へ戻ってから、発注書や請求書を見比べながら棚卸し関連を調査してみた。
その実態が明らかになっていくと、血の気がひくように青ざめていくのが自分でもわかったのである。
次回へつづく。
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